男性ホルモンが増加すると自閉症になりやすい?

男性ホルモンと呼ばれる「テストステロン」。これが増加すると共感性が減少するかもしれないという研究が行われた。

男性ホルモンのテストステロンが人の認知的共感を減少させ、テストステロンの影響を強く受けた「男性化した脳」は自閉症と関係している、とする説が近年は注目を集めています。

テストステロンと認知的共感の関係性の研究は、多く行われていないのが現状。

しかし、この分野の過去研究はサンプル数が少なく、因果関係を示した研究結果ではないということで、新たに研究者が過去最大の規模でテストステロンと認知的共感の関係を調査しました。

テストステロンが認知的共感を減少させることを示した初期の研究は、サンプル数が限られており、両者の直接的なつながりを示すものではなかったと、論文著者の1人であるウェスタン大学の神経経済学・行動経済学者であるAmos Nadler氏は述べています。

2011年に行われた研究では16人の女性にテストステロンを投与したところ、人の感情を読むパフォーマンスが低下したとのこと。

上記研究の研究者らは、自分たちが行った実験結果は「出生前のテストステロンへの暴露が、他者の感情の読み取りを不得意とする『男性化した脳』を作り出す」という仮説を支持するものだと結論づけました。実際には、テストステロンと指の長さの関係に対しては賛否両論がありますが、この研究は自閉症が「男性化した脳」によるものだとする仮説を支持するために使われることになりました。

しかし、後にこれら過去の研究はサンプル数が少ないことと、因果関係から導き出されたものではないことで、確証は弱いとみなされることになりました。

Nadler氏とNave氏は、テストステロンと認知的共感の関係を示すより強い証拠を得るべく、643人の健康な男性を対象にランダム化比較研究を行いました。この研究で被験者は「テストステロンのジェルを塗るグループ」「プラセボのグループ」に分けられ、アンケートに答えるとともに、共感的認知を測定するための行動タスクを課せられました。その後、被験者は俳優の目を写した写真から感情を推測するテストや、指比の測定を行ったとのこと。

この結果、テストステロンジェルは被験者のホルモンレベルを上昇させたものの、テストステロンが認知的共感を減少させるという結果は示されませんでした。また、被験者のパフォーマンスと指比の間にも関係は見つからなかったと研究者は述べています。

つまり、テストステロンの増加と共感性の減少との関係性は見つからなかった。という結論に。ただし、研究者の Nave氏はこう述べてもいます。

「結果は明白でしたが、『証拠がないこと』は、『存在しないことの証拠』にはなりません。テストステロンの効果を支持する証拠を見つけることはできませんでしたが、これは、全ての効果の可能性を除外しているわけではないのです。もしテストステロンに効果があっても、その効果が複雑で、直線的なものではないのだと考えています」と述べました。

なるほど。そして調査方法についても今後いろいろと検討すべき課題があるようです。

2011年の研究は女性を被験者とし、新たな研究は男性を被験者としていることから、結果が異なった可能性もあるとみられています。一方で、最新の研究は過去研究よりもずっと規模の大きいものであることから、研究者は研究結果が信頼性の高いものだとしています。

自閉症が極端に「男性化した脳」から生まれるという仮説は注目を集めていますが、データの上では、まだ強い証拠は得られていないと研究者は注意を促しています。「今のところ、この件に関して私たちは無知であると、認めなければいけません」と研究者は語りました。

今のところ、テストステロンの増加と自閉症についてはそれほど深く考慮する必要がなさそうです。

https://gigazine.net/news/20191003-testosterone-cognitive-empathy/

スポンサーリンク