政治的発言に対する言論弾圧か? – 香港デモへの支持を表明したプロゲーマーが賞金はく奪&トーナメント参加禁止措置をとられる

プロゲーマーがゲーム大会のトーナメント戦終了後にインタビューで香港デモを支持する発言をしたことに対して、運営元のゲーム会社が賞金のはく奪と1年間のプロゲーマー参加資格停止措置をとりました。

アメリカのゲーム会社であるブリザード・エンターテイメントは、プロゲーマーのBlitzchung氏が人気ゲーム「ハースストーン」のトーナメント後インタビューで香港デモへの支持を表明したことを問題視し、賞金の剥奪および今後1年間のトーナメント参加を禁止する措置をとりました。中国への投資を行う欧米企業が中国政府の反発を恐れ、言論の自由を抑圧するかのような動きを見せていることに対しては、企業内部や上院議員から懸念の声が挙がっています。

https://playhearthstone.com/en-us/blog/23179289

https://www.invenglobal.com/articles/9242/hong-kong-player-blitzchung-calls-for-liberation-of-his-country-in-post-game-interview

https://arstechnica.com/tech-policy/2019/10/blizzard-bans-pro-hearthstone-gamer-for-statement-supporting-hong-kong/

中国で行われているデモに対し、プロゲーマーに罰則を与えた運営元のゲーム企業はアメリカ。ここまで敏感になる必要がどうしてあったのでしょうか?

香港では逃亡犯条例改正案に端を発するデモが数カ月にわたって続いており、中国政府は香港デモをおとしめる活動をTwitterなどのSNSで展開しています。

Blitzchung氏は香港出身のプロゲーマーであり、ハースストーンのプロトーナメントであるグランドマスターズで活躍していました。2019年10月、Blitzchung氏はグランドマスターズ後のインタビュー内で、香港デモを支持する声明を発表し、大きな話題となりました。

この出来事を問題視したブリザード・エンターテイメントは、「『一部の人々や公衆のグループを怒らせる行為』を禁ずる規定に違反した」と判断。Blitzchung氏からグランドマスターズへの参加資格と獲得賞金の剥奪、そして2019年10月5日~2020年10月5日までの1年間にわたり、ハースストーンのトーナメントに参加することを禁止する措置をとりました。

プロゲーマーは香港出身だったということが挙げられています。プロゲーマーとしてある一定の発言力を持つ立場で香港デモを支持する発言を行ったということでしょうか。話題性のある出来事ではありますが、ブリザードエンターテイメントが下した処分は厳しすぎる気がします。まるで香港デモの不支持を暗に示すような措置にもみえます。なお、このときプロゲーマーにインタビューした2人名のスタッフも解雇処分を受けているそうです。

Blitzchung氏はInven Globalに対して声明を発表し、「ご存じの通り、私の国(香港)では深刻な抗議活動が起こっています。放送での発言は抗議活動に別の形で参加したもので、より大きな注意を引きたいと願ったからです」とコメント。Blitzchung氏自身も放送で政治的発言をすることの意味は理解しており、実生活の安全にも悪影響が出るかもしれないと述べましたが、香港デモへの支持を表明することは自分の義務だと主張しています。

プロゲーマーの政治的発言の主張は自分の意思であることと、それを訂正する気がないことがうかがえます。今回のプロゲーマーの件とは別に、バスケットボール業界でも同様の出来事が起こっています。

香港デモは中国政府にとって頭の痛い問題であり、中国政府が経済力を利用して、欧米企業による香港支持の発言を抑え込もうという動きが活発化しています。Blitzchung氏の騒動とほぼ同じころ、アメリカのプロバスケットボールチームのヒューストン・ロケッツゼネラルマネージャー(GM)を務めるダリル・モーリー氏がTwitter上で香港デモへの支持を表明。この発言が中国国内の反発を引き起こし、ロケッツは中国のスポンサー契約を失いました。

スポンサーが中国だということであちこちで言論の自由が制限されているような状況が起こっているようです。こういった動きに対して反発の声も挙がっています。

こうした動きに対して、アメリカの上院議員や欧米企業内からも反発の声が挙がっています。

Ahttps://www.theverge.com/2019/10/8/20905181/blizzard-hearthstone-player-ban-marco-rubio-ron-wyden-china-hong-kong-protests-blitzchung

アメリカの上院議員であるロン・ワイデン氏はブリザード・エンターテイメントの決定を受け、「ブリザードは中国共産党を喜ばせるために恥ずかしい行いをした」「アメリカの企業は自由を求める声を検閲するべきではない」とコメントしました。

また、マルコ・ルビオ上院議員もこの一件に反応し、「中国に住んでいない人は自己検閲するか、解雇または停職に直面しなければなりません」「中国は市場へのアクセスを使用して、言論の自由を世界規模で破壊しています」と述べて言論への弾圧を批判しました。

ブリザード・エンターテイメントの決定は外部からだけでなく、企業内部からも反発を受けています。決定に怒った従業員らは、ブリザード・エンターテイメントのオフィス内にある「Think Globally(世界規模で考える)」「Every Voice Matters(全ての声が重要)」といった標語を紙で隠すといった抗議活動をとっているとのこと。

ファンの間にも批判の声が広がっており、Twitter上では「#BoycottBlizzard」を使ったツイートで、ブリザード・エンターテイメントに対する批判の声が集まっています。

https://www.polygon.com/2019/10/8/20904972/blizzard-boycott-campaign-hearthstone-hong-kong-blitzchung-china

ブリザード・エンターテイメントがとった今回の措置、中国スポンサーの意見を聞くことで企業イメージが少なからずダウンしたように感じるのは私だけでしょうか。

https://gigazine.net/news/20191009-blizzard-bans-hong-kong-support-gamer/

追記

この事件の3日後、政治的発言を行った選手の賞金剥奪は撤回になり、処分が一部軽減されています。

Blitzchung選手らの処分を巡っては性急に過ぎたとして、プレイ自体は公正なものであったBlitzchung選手への賞金剥奪処分を撤回する意向を明らかに。ただし、「フェアプレイ」の内容には試合前後での適切な行動が含まれるとし、配信に与えた影響の結果として、6ヶ月の試合出場停止処分を与えるとしました。

発言に賛同したキャスター達についても、その本来の役割は「(視聴者らを)大会に集中させることが目的」であるとして、同じく6ヶ月の出演停止にしたとしています。

とりあえず大会の賞金は支払われるようになり、運営へのバッシングは軽減されたように思います。しかしプロゲーマーが6か月もの出場停止をくらうことは重いペナルティであることには違いありません。

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